高層ビルの下を歩いてたら、前を行く人たちがある地点に来ると進路を急に変える。
何だろうと思って、その地点まで来ると、道の真ん中にネズミの死骸が……。
思わずそれをよけて通り過ぎた。
数歩過ぎたところで立ち止まった。
少年の日の記憶がフラッシュバックする。
小学校の頃、学校帰りに野良猫と出会った。
勝手にチコと名前を付けた。
いつも同じ所をところをうろついていた。
友達と一緒に給食の残りをあげたりした。
ある日、チコは道の真ん中で死んでいた。
車か何かに轢かれたようだ。
怖くて誰もその死体には近づけなかった。
一度家に帰ったが、気になって仕方ない。
引き返してみると、死体はまだ道の真ん中に横たわっていた。
勇気を振り絞ってそれを抱えると、近くの林の木の下に移した。
あの日の、少年だった自分に負けてはいけない……。
そう思って、引き返した。
道の真ん中に横たわるネズミを手に取って、近くの生垣に移した。
外から見えないように枝の下に横たえた。
少年だった日の自分に負けてはいけない……。