M's last diary

自分について知っているニ三の事柄

「街とその不確かな壁」


「街とその不確かな壁」を読了したので、その感想をここに記しておくことにする。

これを読んだと言うと、「どうなの? 村上春樹って面白いの?」って聞かれることが多い。そういう人は大抵読んでいない。しかも「大して面白くないよ」という反応を期待している。

 

村上春樹は特殊な作家になってしまった。

その新作が出るたびにニュースになる。そんな小説家は今の日本に他にはいない。

大学時代に最初に読んだ時にはそんな作家ではなかった。どちらかというと、ある特定の人が読む作家で、いわゆる大衆作家とは違う雰囲気だった。「ノルウェイの森」が大ベストセラーとなって、彼を取り巻く環境は変わったような気がする。

全ての作品を読んでいる訳ではないが、同時代に出てきた作家として、新作が出るのが楽しみな作家であることは確かだ。

 

さてと、今度の新作の話だが……買って3~4日で読んでしまった。つまり面白かった。

相変わらずメタファーが多い作品なので、これを理解しているかと言われると正直判らない。しかし理解することが文学の正しい読み方とは限らない。判らないけれど面白いという作品もある。村上春樹もそんな作家の一人だと思う。

読みながら思い出したのは、高校のころに夢中になったカフカの小説たちである。

「審判」「城」「変身」などのカフカの作品は、同じように判らないが面白い小説だった。

 

「面白いから読んでみなよ」と他人に進めるのは躊躇する。

そんなことをしなくても読み人は読むし、読まない人は読まないだろう。

しかし、久しぶりに楽しい読書体験だったことは確かだ。